2020.04.30

コロナショックが与えた中国ライブコマースへの影響

新型コロナ蔓延の影響で外出自粛を強いられ、中国国内ではオンラインでの買い物需要が急増しました。

 

 

更に、

・卸売市場の閉鎖

・物流システムの切断

・交通規制の物流制限

などで商品発送が滞っていたものも次第に回復傾向にあり、購買を我慢していた消費者の購買意欲が今にも爆発しそうだ、という見立てもあると言われています。

 

 

なぜ外出自粛の中ここまで消費者の購買意欲は高められたのか。

それは、中国SNSのライブコマース進出が急加速した為だと考えられます。

 

  • ショート動画SNSとライブコマースが連携を強める

 

 

 

新型コロナ期間中、アリババ、テンセント、「抖音(Douyin、海外版は「TikTok」)」、「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」、「拼多多(Pingduoduo)」、「京東(JD.com)」、「蘇寧(SUNING)」など、中国の主流プラットフォームのほぼすべてがライブコマースを支援するキャンペーンを行いました。

 

その結果、抖音と快手のDAU(一日のアクティブユーザー数)がともに史上最多を記録し、また、2月7日のデータによると、それまでの14日間で、アリババ傘下のEC「淘宝(タオバオ)」のライブ配信視聴者は合計で43.13%増え、配信1回あたりの視聴者は30.05%増えるという盛り上がりを見せる結果となりました。

 

そして、その流れを受け、ライブコマースで販売する商品には、これまでのアパレル、宝飾品、食品、コスメに加え、不動産、クルマ、医療物資も見られるような拡大を見せました。

 

  • 中国ライブコマースが急伸した理由とは

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

なぜここまで中国国内のライブコマース需要が急成長したのか。

 

もちろん、コロナの影響で店を開けない、外出自粛の為お客が来ない、などの課題も大きな理由ではありますが、他にもいくつか要因があげられます。

  • ショート動画アプリのライブコマース支援強化

 

EC機能を備えているショート動画アプリ大手の「抖音(Douyin、海外では「TikTok」)」と「快手(Kuaishou、海外版は「Kwai」)」は、新型肺炎の影響を受けているショップ向けに次々と優遇策を打ち出し、より多くのショップを自らのプラットフォームへ取り込もうと動きました。

 

例えば、快手はショップオーナーをサポートする「春暖計画」を発表し、ショップオーナーは2月6日から無条件でオンライン店舗「快手小店」に参加することが出来、保証金と企業認証費用が全額無料となると同時に、注文成立の際に差し引かれる技術サービス料も免除され、企業はチャネル手数料の1%だけを負担すればよいという制度を設け、また、抖音も「オンラインショップに閉店はない」というキャンペーンを開始し、中国全土の実店舗のショップオーナーに向けて、アクセス支援を行い、オンラインでのライブ配信を通じて、オンラインでの販売促進チャネルを開拓できるようサポートを行いました。

 

他にも優秀なトレーナーによるオンライン指導やアクセス指導など、ライブコマース出店初心者にも丁寧なサポートを行ったことが大きな要因としてあげられます。

 

  • 低価格、高品質の実現

 

2つ目は京喜オンラインや拼多多などの大手ライブコマースサイトが独自の配送ルートを構築したという点が挙げられます。

ライブコマースへの出店ハードルを下げ、出店者を増やしたことでメーカは購入者へ直で物を販売することが可能となり、販売仲介手数料などを省略することが可能となりました。

 

これは日本国内でも昨今D2C化が盛り上がりを見せているのと同様の理由だと考えられますが、中国国内では今回のコロナショックを受け、更にD2C化が加速していると考えられます。

 

  • ライブコマースとライブ配信の相性

 

3つ目はライブコマースとライブ配信との相性の良さが挙げられます。

 

今回のコロナショックの影響により、中国では農産物のライブコマース販売が急拡大しました。

 

それは上記であげた2つの理由も関係していますが、もう一つ言われているのはどんなに質素な部屋からライブ配信をしたとはいえ、それでも工場や農村地方の作業場よりも商品を魅力的に魅せる事が出来る、という点だと言われています。

 

また今までは商品画像、もしくは現地に赴いて直接確認する、しか認知する方法が無かった商品を生産者や育成に関わる人自らが紹介することで商品への信頼感が増した事も理由としてあげられるのではないでしょうか。

 

  • これからの中国ライブコマース市場

 

中国のライブコマース市場はまだブルーオーシャンだと言われており、2019年、中国のライブコマースの市場規模は4338億元(約7兆円)で、2020年には倍増すると予想されています。

 

また、淘宝のライブ配信担当の趙圓圓氏は、ライブコマースの成長はあと5年続くと見ている。5年後にはビジネスモデルが完全に定着し、大きな成長が望めなくなるという。裏を返せば、今後5年間は試行錯誤してもリスクが低く、規模を拡大するのに最適だという見解も示しています。

 

快手は拼多多と提携し、テンセントはEC大手京東傘下の「京喜」に出資、アリババも抖音と提携しているなど、ライブコマースとライブ配信プラットフォームはこれからも連携を強化し、市場を伸ばしていくと考えられています。

 

参考:

36kr JAPAN「新型コロナ禍でも好調な中国ブランド中古品市場、そのビジネスの裏側に迫る」:https://36kr.jp/63581/

36kr JAPAN「EC大手が相次いで参入の中国ライブコマース事業、新型コロナで分水嶺を迎える」:https://36kr.jp/62661/

36kr JAPAN「ショート動画アプリで商品売り!新型肺炎でオンラインへの移行が急激に進む小売り店舗」:https://36kr.jp/54517/