2020.08.20

中国独自のD2Cモデルの発展

D2C(Direct to Consumer)は、一夜にして中国EC業界の最前線へと躍り出ました。多くのブランドが我先にと取り組み始めたD2Cビジネスモデル。以下では、中国でのD2Cビジネスモデルの在り方についてご紹介いたします。

1、小売り市場でのデジタル改革

中国の小売市場において、巨大オンラインマーケットプレイスである「アリババ」と「JD.com」の覇権争いは長きに渡り行われていた。そこに突如現れた拼多多がテンセントの不動の地位を奪取するなど、ブランド各社の取引主戦場はオンラインプラットフォーム上へと急激に移行していった。

そんな中、アリババはアリババ.com上の消費者データを活用することでブランドが効率的に顧客獲得を行い、利益を追求していける仕組みを構築しデジタルマーケティングにおいて成功を収めました。

同時に、オンラインマーケット全体(ECプラットフォーム、チャネル、ブランド及び、サプライチェーン)もそれぞれデジタル化を進め顧客獲得費用を効率的になっていった。その中でも特に重要なのか顧客管理と運用だと言われている。

2.アメリカD2Cモデルを参考にする

アメリカはD2Cモデルの最先端国と言われています。アメリカではブランド直販のオンラインストアが多くの影響力を持っており、アメリカD2CブランドはSNSなどをうまく活用し顧客を獲得した後、ユーザーを公式HPに誘導し、アカウント登録を促します。その後、メールマーケティングやDMP広告などで継続的に消費者とコミュニケーションを取っていきます。
 特にアメリカ人はEメールを日々活用する文化が根付いているため、リマーケティングは他国と比べて容易に行うことが可能で、その分、製品設計や体験価値の設計に時間を割くことが可能となっているようです。

メディアでもよく取り上げられるマットレスD2Cブランド「キャスパー」を例に考えてみましょう。「キャスパー」はまず“完璧な”マットレスを生み出しました。ここで言う“完璧な”というのは、出来るだけ大勢の人々の基本的なニーズを考え、解決したということです。これによりユーザーの選択肢を自社製品1本に絞ることに成功し、販売、宣伝などに関する予算を大幅に削減しました。市場ニーズを100%満たすことは難しいですが、70%の需要を満たすことで成立するビジネスモデルとしては成功例でしょう。

同時に「キャスパー」はマーケティングにおいて2点、特に気をつけていたことがありました。それは口コミと対話です。ユーザーが手軽に試せるように返品ハードルを下げることで口コミを増やし、顧客潜在層と直接話す場を設けるため地域マーケティングにも注力していたことが特徴として挙げられます。

もう一つ、中国でも馴染みのあるチョコレートブランド「m&m’s」を例に上げてみましょう。
「m&m’s」には「My m&m’s」という消費者がチョコレートの色や柄を自由にカスタマイズ出来るオンラインD2Cビジネスモデルがあります。普段から気軽に買えて人気の高い「m&m’s」を、逆にギフト用にカスタマイズし、プレミア商品化することが出来るという点が消費者にウケる結果となりました。

「キャスパー」同様、「m&m’s」もメルマガ配信などのデジタルマーケティングを活用し、顧客獲得を行っています。アメリカ人にはオンラインで買い物をする習慣が根付いており口コミの信頼性が高いという国民性もEDMが有効なマーケティングツールとして活用されている理由として挙げられます。

3、中国独自のD2Cモデルへの道のり

中国のD2Cモデルが他国と比べ出遅れていたか、というとそういうわけではありません。2007年に設立され、中国国内で爆発的な人気を誇ったアパレルブランド「Vancl(※1)」が中国D2Cの先駆けと言えます。当時はまだECサイトなどの競合も少なく、ブランドが自身のチャネルを持つという事も少なかったため、「Vancl」が単独で急成長を遂げた、という事も考えられます。

※1) 「VANCL(凡客)」は,中国で2007年に設立したメンズ・ファッションEC。中国No.1アパレルEC。自社ブランドのみを製造販売するSPAという業態で、日本で言えばユニクロに近い存在。

対して現在、中国国内ではオンラインショッピングの割合が増え、貯蓄消費からクレジット消費時代へと移り変わってきた事で、様々なブランドが自身のチャネルを展開しています。と、同時にプラットフォームとなるECサイト、Eコマースサービスは数社の有力なサービスに限定されてきている現状もあります。

中国ではアメリカと比べ顧客獲得単価が高く、良質な顧客獲得および長期的なファン化をすることがブランド成功の必要な要素とされています。そのため、しっかりとしたSNS運用、ファンがコンテンツを拡散する仕組み(UGC,KOC活用など)、コミュニティの形成と運営、獲得したビッグデータに基づく消費者のライフサイクル管理及び、ユーザー管理、などが必要となります。

 具体的に言うと、SNS広告やブランドのチャネルを通じて顧客を獲得し、ユーザーをブランドのSNSやプライベートドメイン運用プラットフォームへと導き、サービスアカウント、企業のSNSアカウント、コミュニティに登録してもらいます。
その後、EDMを活用した複数の手法により、コンテンツへのリーチを更に増やし、ファンとの対話を行い、購入の履歴を分析し、自社ブランドの購買へとつなげていくのです。

4 D2Cマーケティングと従来型のEコマースとの違い

D2Cモデルにおけるマーケティング手法と従来型Eコマースのマーケティング手法は大きく異なります。従来型のEコマースではサイトに訪れた人々の中からどれだけ自社ページに集客し、顧客を獲得していくか、という所が勝負とされていました。当然、Eコマースチャネルの運用可能範囲もかなり限られます。対して、D2Cマーケティングでは、数多のユーザーデータ獲得と解析、活用が最も重要な要素となります。そのため、前述したステップを踏み、ユーザーからの情報(趣味趣向や口コミなど)を様々な形で取得をしていくのです。
 以下、D2Cブランドとして成功した3つの例を紹介していきましょう。

始めはネットで話題となったヨーグルトブランドの「楽純(ラチュン)」です。「楽純(ラチュン)」の急成長は中国D2Cブランドの典型的な成功例と言って良いでしょう。それは製品コンセプトから体験的価値の提供、ユーザー参加の施策や話題性の創出、そして消費トレントに基づいた製品システムなど、とても良く考えられていました。

「楽純(ラチュン)」は海外の大企業やインターネット企業を先に捕まえることで第一陣となるファンを素早く獲得しました。5元以内に設定されていた格安の配送料もファンを作る大きな要素だったでしょう。「楽純(ラチュン)」における顧客コミュニケーションは公式アカウントとショートメッセージの送信という2つのツールで行われており、消費者の毎日の生活の中で「楽純(ラチュン)」を食べる事が習慣化するよう設計されている点も見事です。

続いては、老舗ベビー用品ブランド「ミード・ジョンソン」の例です。同社のサイトでは様々なタイプのユーザーにパーソナライズされたコンテンツを見ることが出来ます。またサイト内でのクーポン配布や既存ユーザーによる新規ユーザーの紹介などスピーディに顧客の獲得を行っています。
 また「ミード・ジョンソン」のD2C部門はEコーマス部門から独立しており、マーケティング部門によって顧客管理などがされているそうです。プラットフォームに依存する形ではなく、サードパーティのサービスを活用することで顧客情報は自社に蓄積され100%自社で情報の管理を行える体制を整えている、とのことでした。
 これはまさしくD2Cマーケティングに必要な要素と言えます。

続いてはコスメブランド「Afu」の例となります。「Afu」では様々な方法でユーザーをブランドのプライベートドメインに誘導し、コミュニティに参加させた後、1対1でサービスを提供出来る形を構築し、ユーザーの維持を実現させています。「Afu」のD2C事業売上は年間1億元を越え、同社に多大な貢献をしているビジネスとなっています。

これら3つのブランド実践例を見ると、効率的な顧客管理がD2Cビジネスにおいて重要なポイントだという事がわかります。どのビジネスにおいても顧客獲得にコストをかけますが、その顧客獲得コストが増えていく中で、いかに顧客を抱え込みCLVを高めていくか、それが今後D2Cビジネスを展開するブランド成功のカギと言えるでしょう。

参考URL:https://twgreatdaily.com/WmnRfG8BMH2_cNUgoGWP.html