2019.10.19

WEIBOが新SNSアプリ“中国版インスタグラム”スタート、流行に敏感なSNSユーザーの乗り換えは?

日々情報が更新されていく今の時代、常に最新のトレンドはキャッチしておきたいもの。

8月29日、中国版ツイッター・微博が低調な中、画像を投稿・共有できる最新SNSアプリ“绿洲”が配信をスタートした。

このサービスのコンセプトは「若者のトレンドを配信する場」であり、微博に代わる新しいSNSとして注目されている。また、既存のインスタグラムのサービスに、中国国内の大手ネットショップ「小紅書」のサービスを連携させるという点も大きな関心を呼んでいる。

 

9月3日時点、微博が新しくスタートさせたアプリ“绿洲”は、アップル社のApp Store、無料SNSアプリ部門でダウンロード数第一位となっている。微博の株価は上昇し、最高で4.98%、43.43米ドルまで上がり、時価総額は97億米ドルに上った。

 

 

截止9月3日,微博新推出的社交App“绿洲”目前在苹果商店App Store免费社交软件榜中排名第一

9月3日時点、微博が新しくスタートさせたアプリ“绿洲”は、アップル社のApp Store、無料SNSアプリ部門でダウンロード数第一位となった。

 

 

“绿洲”のバックグラウンドが中国最大のSNS・微博であることから、流行に敏感なSNSユーザーの獲得は間違いなく、また既に“绿洲”に乗り換えているユーザーも多い。

 

サービスでは、ユーザーへのおすすめや、注目アカウントなどが表示される。また、微博のアカウントをリンクしているユーザーは、例えば微博で「流行メイク」を既にフォローしている場合、“绿洲”上でもおすすめとして表示される仕組みだ。おすすめは全部で11ジャンルに分かれている。ファッション、グルメ、旅行、メイク、スポーツ、芸能、ペット、写真、育児、インテリア、そして美容だ。

 

“绿洲”配信が好調な理由として、配信スタートのタイミングが挙げられる。

先月、小紅書がiOS Appstoreとアンドロイドでのアプリ配信を停止した。再開の見込みはまだ決まっていない。このタイミングでの“绿洲”配信スタートは、小紅書に対する一種の「襲撃」と言ってもいいだろう。

“绿洲”のトップページ、マイページ、いいねなどの仕様はインスタグラムとほぼ同様である。異なる点として“绿洲”は「小紅書と直接リンクしている」ことから、敢えて“小緑書”と呼んでもいいだろう。

 

 

 

 

 

 

 

“绿洲”ユーザーは、今後どのようにサービスを活用できるようになるのか期待されている。

 

 

中国の流行に敏感なSNSユーザーが最も重視するのは、そのサービスを繰り返し利用できるかという点だ。

中国特有の各サービスの仕組みと、その商業モデルは、インスタグラマーやユーチューバーなどのいわゆるインフルエンサーと、彼らを仲介するMCNによって決定付けられる。ちなみに、中国のSNS業界ではWeChat、微博が最も多くのユーザーを有しており、動画配信サービスとしては抖音、快手が、コミュニティーサイトとしてはB站小紅書と知乎、そしてネットショッピングの分野では淘宝、京东、唯品会が中国最大のマーケットとなっている。

 

最近では、フォロワー同士でコミュニティーを形成する場面も増えてきている。スポーツ、ダイエット、映画鑑賞などの趣味・嗜好ごとに、フォロワー同士がコメントし合ったり、自身のSNS上で発信して共有したり、また、あるアカウントのフォロワー同士が相互フォローし合う場面も見られる。

 

Fil小白やMr.Bags包先生などの有名アカウントをはじめ、Vogue中国編集長の张宇、ELLE編集長の晓雪など、メディアを代表する人物や、多くの芸能人が“绿洲”のおすすめアカウントとして表示される。現在では小紅書のユーザーのほとんどが“绿洲”に登録しているといった変化も見られる。

 

 

 

 

今後、“绿洲”では微博のフォロワーと連携してサービスを進めていくものと見られている。

 

これまで、小紅書、抖音などが行ってきた新規ユーザー獲得の戦略とは異なり、“绿洲”は、微博からユーザーを引き継ぐかたちでその金字塔を打ち立てようというのだ。

また、サービスの最大の特徴として、小紅書のサービスが利用できるという点を強調している。注目すべきは、現時点“绿洲”のフォロワー数は表示されていないという点だ。

ショップやブランドのマーケティング戦略において、ユーザー、KOLの分析が非常に難しくなっている。

 

“绿洲”と小紅書の違いとして、小紅書は大量の商品を掲載する方法でサービスを提供していたのに対し、“绿洲”は、検索画面からユーザーの趣向に合ったものを表示するという点が挙げられる。

 

 

常に言われ続けていることでもあるが、高度な分析によってこそ、新しい可能性を見出す機会を得られるというものだ。

既存のサービスに取って代わり、中国のメディアは新しい時代に入ろうとしている。

今後は、誰も感心を持っていなかった分野にこそチャンスが到来する。インフルエンサーたちは、細かく分析することで勝利のチャンスを得られるのだ。

2、3年または4、5年おきに人気が移り変わる。サービスが有名になってしまう前にこそ、インフルエンサーになれるチャンスがある。サービスの知名度が高くなってからそこでインフルエンサーになろうとしても、無理な話だ。

 

これまでに、抖音、小紅書など様々なサービスが入れ替わってきた。同じ分野で勝負するには、サービスの内容だけではなく、どれだけ豊富なユーザーを獲得できるかが競争力につながる。

 

 

常に、サービスが流行するチャンスがあり、今後も新しいサービスが生まれ続けるだろう。様々なサービスが流行するきっかけや、注目される内容、インフルエンサーなど、その要因は多様化し、どんなものでも流行する可能性を持っていると言っていいだろう。

 

流行に敏感なSNSユーザーは、新しいサービスを求める。微博、WeChatから、長い文章を短い動画にまとめたVlogまで、新しいサービスが生まれるたび、ユーザーの求めるものは毎回変わる。

また、マーケット全体の特徴として、ユーザー、消費者は人気アカウントの影響を受けやすいという点が挙げられる。多くのブランド、ショップはインフルエンサーに商品の宣伝を依頼する。マーケットはまだまだ成長の可能性を持っているのだ。

 

社会の構造から比較してみると、比較的凝り固まったヨーロッパのマーケット事情に対し、中国のSNSを活用したマーケットは、今後も大いに成長の可能性があると言える。これまでも、中国のマーケットはSNSや若者によって変化してきた。提供するサービス、フォロワー、若者のユーザーはどんどん増えていった。インフルエンサーについての認知度も比較的高い。

 

 

 

この2年で、人々の商品に対する関心は明らかに高くなっている。多くのインフルエンサーが企業とコラボレーションし、商品の宣伝を行い、若者や中間層向けの商品を多く売り出してきた。多くの商品がインフルエンサーの介在を必要としており、また、どのアカウントを起用して宣伝するかということも非常に重要となってくる。商品によって、宣伝に最適なアカウントが異なってくるからだ。

インフルエンサーは、消費者と企業の架け橋となる。2017年、世界的なマーケティングコンサルティングを行う企業が、R3機関の代表Greg Paullにインタービューしたところ、中国の鍵を握るKOLは、世界的に見ても飛躍しており、既に一つの媒体として完成されているという。FT中国版がこれを報道した際、中国では、人気アカウントまたKOLのマーケティング効果は、テレビや紙媒体の広告など、既存の宣伝方法にとってかわるものであり、商品やブランドは、インフルエンサーや芸能人を介して宣伝したほうが、影響力があると紹介された。

 

 

 

Estee Lauderグループの首席執行官Fabrizio Fredaは、商品の売り出しを行うにあたってこう話している。「マーケットにおいては数字が非常に重要である。75%の費用はSNSでのマーケティングに使うことによって高い効果が得られるだろう。」2015年のデータと比較すると、Estee Lauderグループの全世界でのマーケット予算は27.7億ドルであったが、現在ではその額は10億ドルにとどまっている。

SNSを利用したマーケティングの変化に伴い、企業の変化も必須となる。企業は、人気アカウントと連携したマーケティングが必須であることを認識し始めた。また、人気アカウントたちは、商品の流れなど、宣伝効果を常に意識しなければならない。

人気アカウントになるための仕組みは変わっていない。提示された条件、期待に応えれば厚い信頼を得られる。それはサービスが変わっても同じことだ。商品を売ることは手段、信頼こそが人気アカウントの基礎なのだ。

小紅書はまだ人気アカウントの商業化以降の問題に気付いていない。今後“小緑書”になってから気づくのだろう。